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2ピンデジタル温度センサLMT01を新型ローンチパッドにつなごう! (Episode 1-5 電池動作編)

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技術コラム

2018年 7月31日

マイコンコラム

2ピンデジタル温度センサLMT01を新型ローンチパッドにつなごう!
Episode 1-5 電池動作編
前回は、この新型ローンチパッドに、LMT01+I2C LCDを接続するボードを作製して、LMT01+I2C LCD制御プログラムを組み込んで、温度計として動作させる例を紹介しました。
今回は、このローンチパッド+LMT01+I2C LCDボードを電池一本で動かすための電源ボードを製作して、単四電池一本で動作させる例を紹介します。
下図はそのイメージ図になります。

前回で、LMT01で温度を検出し、ローンチパッド+I2C LCDで温度の表示を行えるようになりました。
しかし、このボード一式を動かすには、マイクロUSBケーブルを使用してUSB機器例えば、モバイルバッテリなどから5Vを供給するしかなく、
大掛かりなものになってしまいます。
そこで、TI社の電源ICを使用した電源ボードを作製して、単四電池一本から3.3Vを作り、MSP430やI2C LCD、LMT01に3.3Vを供給して、
本ボード一式を動かしてみました。
●単四電池1本から3.3Vを得る方法
単四電池の公称電圧は1.5Vです。しかし使用時は、接続されている負荷による電流、及び容量低下により、その電圧が低下します。
また、繰り返し充電して使用できるニッケル水素単四電池も使いたくなります。これらを考慮しても、通常、電池電圧1V ~ 0.9V程度まで使用することが一般的です。
このため、0.9V程度から3.3V程度まで昇圧可能な電源回路を作製する必要があります。
●昇圧電源のいろいろ
低電圧から昇圧する場合は一般的に以下の2種類の方式から、選択されます。
・チャージポンプ
・昇圧DCDCコンバータ
チャージポンプは、下図のように、スイッチング素子とコンデンサを組み合わせて、電圧を上昇させる方式です。

   チャージポンプ回路例

 
このため、他の方式と比較して、部品点数はチャージポンプの方が少なくて済みますが、一般的にチャージポンプは、
大きな電流を供給することが難しい方式です。
昇圧DCDCコンバータは、電気エネルギを磁気エネルギに変換し、それを再度電気エネルギに変換して、電圧を上昇させる方式であり、
下図のように、スイッチング素子とコイル及びコンデンサが必要となります。チャージポンプと比較すると大電流が取り出せます。

昇圧DCDCコンバータ回路例

出典:TI社ホームページ

今回は、この2つの方式で3.3V電源を作製してみましょう。
なお、電池の容量が低下した場合、どちらの電池も液漏れと過放電(ニッケル水素電池)が発生する可能性があります。
このため、電池電圧が下がりすぎた状態での過度の使用を行わないよう、注意が必要です。
実際に製品を設計する場合は、これらの状態を回避するために、入力側に、UVLO(Under Voltage Lock Out)機能を持ったデバイスを
選定することも1つの方法です。
今回は、単純に3.3Vの電圧を出力する回路を作製します。

①チャージポンプ回路による構成
入力電源のMin値が1V以下であるTPS60310を使用して作製します。
チャージポンプ回路では、1段で昇圧できる電圧は2倍までです。このため、0.9Vから3.3Vを作成するためにはチャージポンプ回路1段では作成できません。
しかし、このデバイスはチャージポンプ回路が2回路入っており、1デバイスで0.9Vから3.3Vを作成できます。
0.9Vから1.8Vの入力電圧で3.3Vの出力を20mAまで供給可能です。
基本的な回路構成は以下の通りです。

出典:TI社TPS60310データシート

OUT1が1段目の出力で、入力電圧を2倍に昇圧します。
OUT2は2段目の出力で、OUT1を2倍もしくは1.5倍に昇圧してOUT2の電圧を監視し、3.3Vの電圧に調整します。
C1F、C2Fはflying capacitorと言い、このコンデンサで入力の電荷を出力側に汲み上げます。このコンデンサは1μFが推奨されます。
入力コンデンサ及び、出力コンデンサについてもflying capacitorの容量に合わせます。その結果、5つのコンデンサはすべて1μFを
使用します。また、温度特性としては、X5R品もしくはX7R品以上を使用します。
リップル電圧を低くするためには、OUT2の外側にLow-Pass filterを配置しますが、今回は使用しません。
作成した回路は以下のようになります。
入力電圧0.9Vから1.8V チャージポンプ回路

基本回路とほとんど変わりませんね。出力電圧固定なので、ほとんどデータシートそのままの回路になります。
チャージポンプ用デバイスのほとんどが、出力電圧固定型か倍率固定型です。このため、チャージポンプ回路では、
設計可能な部分は限られております。
しかし、基板設計時には注意が必要です。可能であれば、データシート等に記載されているパターン図をそのまま使用することがベストですが、
使用する部品などの制約及び部品配置でのクリアランスなどの制約で、現実的には、なかなかデータシート通りのレイアウトをすることができません。
そこで重要なことは、TPS60310と5つのコンデンサを可能な限り直近にしかも片面に実装することです。
更に、この間のパターンは太いバターンでかつ短く、ビアを通さず、1層のみで接続する必要があります。
作製したパターンは下図になります。

部品を実装したところ、設計通り動作することが確認できました。

ボードの動作確認は、入力として、単四型ニッケル水素電池を使用しました。
その電池電圧をマルチメータで計測した時の写真です。電圧は、1.355Vでした。


この電池をボードの入力端子に接続して、チャージポンプボードの出力電圧を計測してみます。

写真の通り、入力電圧1.355V印加時のTPS60310 3.3V出力端子の電圧が3.337Vで、
チャージポンプ回路が動作していることが確認できました。

②昇圧DCDCコンバータ回路による構成
入力電源電圧のMin値が1V以下である必要があるため、0.7Vから昇圧可能なTPS61221を選定しました。
このデバイスは入力電圧 0.7Vから5.5Vまで対応できます。
今回は電池一本なので、高い電圧を入れることはありえませんが、3.3V以上の入力電圧を入れた場合は、
その入力電圧より若干電圧降下した電圧が出力されます。
すなわち、3.3V以上の入力電圧では、昇圧型DCDCコンバータとしては機能しません。ご注意ください。
また、このデバイスでは、出力電圧が3.3Vに固定されていますが、出力電圧の可変設定が可能なTPS61220も用意されています。
このTPS61220デバイスでは1.8Vから5.5Vまでの出力電圧を設定できます。
取り出せる電流値は、TPS61221とは異なりますが、このTPS61220を使用すれば、電池一本で5V出力を得ることもできます。

TPS61221では、スイッチング周波数Fswは入力電圧、出力電圧、使用するコイルのインダクタで決定されます。
そのため、電池の初期電圧時と電池の容量低下時では、そのスイッチング周波数が変化します。
例えば4.7μHのコイルを選定した場合、電池電圧が1.5Vの時は870kHz程度で、電池電圧が0.9Vまで低下した時は700kHz程度で動作します。
具体的には、下記の式で計算できます。
 Fsw = (1 / (L × 200mA)) × ((Vin × (Vout – Vin)) / Vout)
コイルの値は2.2μH以上で設定する必要がありますが、データシートによると4.7μHが推奨されています。
このインダクタンスの値が大きい方が、効率が向上します。
昇圧DCDCコンバータの場合、使用可能な電流値は、一般的にスイッチング電流値で規定されます。TPS61221の場合、この値はTypical値で400mAです。
負荷電流値は、スイッチング電流値、および、入力電圧と出力電圧の比で変化します。
効率80%と仮定すると、入力電圧が0.9V、出力電圧が3.3Vの場合、負荷電流値は、約65mAとの計算になります。ただし、この値はTypical値です。
なお、入力コンデンサは10μF以上を推奨されていますので、この値を使用します。
出力コンデンサは4.7μF以上が必須ですが、これもデータシートでは10μFが推奨されています。
ただし、大きなインダクタ値を使用される場合は、以下の式も満足するコンデンサを選定する必要があります。
 Cout ≧ L / 2 (μF/μH)
なお、コンデンサは、製品グレードでX5R品あるいは、X7R品以上を使用します。
これにより作成した回路図は、下記になります。
0.7V DCDC昇圧コンバータ回路図

インダクタは、太陽誘電製 NR3015T4R7M を使用しました。
インダクタを選定される場合は、そのインダクタンス値だけでなく、流せる電流値についての注意が必要です。
TPS61221の場合は、出力電圧が固定でかつ位相補償回路が内蔵されているため、その回路は比較的簡単になります。
しかし、基板設計はチャージポンプより更に注意が必要です。
GNDラインと電源ラインは、TPS61221と同一面で配線し、太いパターンで、その配線長を短くする必要があります。
電源ラインで同一面での配線が必要な配線経路は、入力コンデンサ → コイル →TPS61221(L端子→VOUT端子) → 出力コンデンサ です。
このラインは、極力短く配線する必要があります。
GNDも同様に、入力コンデンサ → TPS61221(GND) → 出力コンデンサ のラインを極力短く配線してください。
作成したパターンは以下のとおりです。
0.7V DCDCコンバータ パターン図

TPS6122xにつきましてはTI社より、特性確認用として、評価ボード(TPS61220EVM-319)が用意されていますので、
こちらもご覧ください。
TPS61220EVM-319

もうひとつDCDCコンバータの例として、0.9Vから動作するTPS61097A-33の回路図、パターン図が下記になります。

0.9V DCDCコンバータ 回路図

0.9V DCDCコンバータ パターン図

こちらのインダクタは、さらに小型(2012サイズ)の太陽誘電製 CBC2012T4R7M を使用しました。
まとめとして、TPS61097A-33/TPS61221/TPS60310 これら3つの電源デバイスを比較した表を下記に載せておきます。


●電源設計ツールWebench(ウェベンチ)について
今回はデバイスの選定を、TI社ページから、いろいろデバイスを探して、上記3デバイスに絞りました。
この様な選定を容易に行える『Webench Designer』という電源設計ツールが用意されており、日本TI社トップページに下記のように埋め込まれています。


上記赤枠部分に設計したい電源の仕様を入力していただくことで、電源デバイスなどの選択、周辺回路の設計や効率などの情報を得ることができ、上記赤枠部分、あるいは、下記のページから始めることができます。
このWeb電源設計ベンチツールWebenchの紹介、使い方説明としてはこちらをご覧ください

●単四電池電源ボードの試作
電源ボードは、EasyedaというベンダのWebツールを使用して、回路図を作製し、レイアウトを行い、表面/裏面のパターンを引いて、発注しました。
コストダウンのために、1枚基板で作り、Pカッタでカットして4種類の基板としました。

なお、左端のTPL0501基板は、デジタルポテンショメータ用のボードで今回は使用しておらず、今回の内容とは関係ありません。

●使用部品
今回は、デバイスやインダクタはMOUSERで購入し、コンデンサは、秋月電子通商で購入しました。

●実装編
リフローは使用せず、すべて、手はんだで実装しました。
但し、TPS61221で使用しているインダクタの手はんだが、パッドにコテを当てる部分がなかったため、難しかったです。
部品(インダクタ)をパッドからずらして、はんだごてを当てる部分を作って、はんだ付けを行いました。
このため、TPS61221ボードのみ、再度、基板全体をあたためて、インダクタがフラットになるようにリワークしました。
あえてフラックスの除去を行なっていないので、あちこちフラックスや加熱のための変色がありますが、基板写真をどうぞ。
試作したDC/DCコンバータ電源 TPS61221基板の写真


試作したチャージポンプ電源TPS60310基板の写真


試作したDC/DCコンバータ電源 TPS61097A-33基板の写真


なお、これらの基板は、社内評価用として作成したもので、販売は行なっておりません。
●ローンチパッド用単四電池電源ボードの試作
それでは、ユニバーサル(万能)基板を使用して、ローンチパッド用単四電池電源ボードを試作します。
ローンチパッドには、基板上面にヘッダピンが出ており、基板裏面には、ヘッダコネクタが搭載されています。
基板上面のヘッダピンには、すでにI2C LCDが搭載されているので、上部ヘッダは使用できません。
このため、裏面のヘッダに電源ボードを搭載する形態にします。
完成した各電源ボード

左から、TPS60310(チャージポンプ)、TPS61221(0.7Vから動作するDC/DCコンバータ)、
TPS61097A-33(0.9Vから動作するDC/DCコンバータ)電源ボードになります。

●はんだ付け時の注意点
電池ボックス部分に、はんだごてがあたってしまい、どれも焦げ跡がついてしまってます。
見栄えを気にされる場合は、はんだ付けされる前に、養生テープなどを電池ボックスに張っておき、はんだ付け完了後にはがすようにする。
あるいは、電池ボックスのはんだ付けを最後に行うようにしたほうが良いかもしれません。
幸いにも下記写真の通り、この電源ボードは、MSP-EXP430FR2433ローンチパッド裏面にドッキングしますので、実際に使用する時には見えません。

単四電池一本でローンチパッドを動かそう 電源ボードを装着しての動作例写真

正面から見た写真では、今回の電源ボードがどう装着されているかが見えないため、
ローンチパッド四方向のネジを外して、左斜め横から見た写真を載せます。

単四電池一本でローンチパッドを動かそう 左斜め横からの写真
次回は、これまでのハードウェアのお話から少し離れて、LMT01+MSP430FR2433+I2C LCDのソフトウェアの紹介を行ないます。
(つづく)

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